ぽかぽかと暖かい春の日差しの中、公園の草むらで小さな赤い虫を見つけた。黒い点々が背中に散りばめられていて、丸っこいフォルム。思わず「あ、てんとう虫」と心が和む。幸運のシンボルなんて言われることもあるし、なんだか良いことがありそうな気がする。指先に乗せてみようかと、そっと手を近づけたその時、ふと違和感を覚えた。あれ?なんだか、いつものてんとう虫と違う気がする。何が違うんだろう。じっと目を凝らして観察してみる。色は確かに鮮やかな赤に近いオレンジ色。黒い点々もちゃんとある。でも、なんというか、表面の質感が違うのだ。いつも見かけるナナホシテントウなんかは、もっとツヤツヤして、光を反射して輝いているイメージがある。でも、目の前にいるこの子は、なんだかマットな感じ。光沢がないというか、少し毛羽立っているような、そんな風合いに見える。気のせいだろうか。虫は私の指先を怖がる様子もなく、ゆっくりと葉の上を移動している。その動きも、なんだか少しだけ、のんびりしているように感じる。アブラムシを探しているにしては、ずいぶんと悠長な動きだ。そして、その虫が止まっている葉をよく見ると、表面が少し白っぽくカスれたようになっている部分があることに気づいた。まさか、この子が葉っぱを食べている…?てんとう虫って、アブラムシを食べる益虫じゃなかったっけ?混乱してきた。もしかして、この子はてんとう虫じゃないのかもしれない。「てんとう虫に似た虫」で検索してみると、「テントウムシダマシ」という名前が出てきた。写真を見ると、まさに目の前にいるこの子によく似ている。体の光沢がなく、植物の葉を食べる害虫…?そうだったのか。君は、てんとう虫じゃなかったんだね。かわいい見た目にすっかり騙されていた。益虫だと思って歓迎するところだった。危ない危ない。自然界には、擬態というか、紛らわしい姿をした生き物がたくさんいるんだなと、改めて感心した。と同時に、見た目だけで判断してはいけないという、人間社会にも通じるような教訓を得た気がした。そっと葉っぱから虫を払い落とし、私はその場を後にした。次に似たような虫を見つけたら、ちゃんと光沢があるかどうか、何を食べているか、しっかり観察しよう。そう心に誓いながら。