数ヶ月前のこと、キッチンの隅に黒くて小さな、米粒より少し細長い物体が落ちているのを見つけました。「ん?なんだこれ?」と拾い上げようとして、はっとしました。もしかして、これはネズミのフン…?いやいや、まさか。うちにはネズミなんていないはず。見間違いか、どこかから紛れ込んだゴミだろう。そう自分に言い聞かせ、ティッシュで包んで捨てました。たった一個だったし、その後は何も見当たらなかったので、すっかりそのことは忘れていました。しかし、それが油断の始まりだったのです。しばらく経ったある夜、寝静まった頃にキッチンの方からカリカリ、ガサゴソという微かな物音が聞こえてきました。気のせいかな、と思いましたが、翌日、食品庫に入れていた袋麺の袋に、何者かにかじられたような小さな穴が開いているのを発見。そして、その近くには、あの時と同じ黒いフンが数個落ちていました。ここでようやく、私は現実を認めざるを得ませんでした。我が家には、ネズミがいる。あの最初の一つは、見間違いでも偶然でもなく、紛れもない警告だったのです。すぐにネズミ駆除の方法をインターネットで調べ、粘着シートや毒餌を仕掛けました。同時に、侵入経路になりそうな場所を探し、怪しい隙間を塞ぐ作業も行いました。それでも、夜中の物音は続き、時折フンも見つかります。ネズミの気配を感じながら生活するのは、想像以上にストレスでした。いつ食べ物に手を出されるか、どこに巣を作られているのか、考えると夜も安心して眠れません。結局、自力での完全駆除は難しいと判断し、専門の駆除業者に依頼することにしました。業者の方によると、壁の中や天井裏に巣を作っており、思った以上に深刻な状況だったようです。駆除と侵入口の徹底的な封鎖作業をしてもらい、ようやく我が家に平和が戻りました。あの時、たった一個のフンを見つけた時点で、もっと真剣に受け止め、すぐに対策を始めていれば、被害はもっと小さく済んだかもしれません。たかが一個、されど一個。ネズミのフンは、見つけたら決して軽視してはいけないサインなのだと、身をもって学んだ出来事でした。
たった一個のふんが始まりだった私のねずみ遭遇記
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