ねずみのふん分析一個から読み解く侵入経路

たった一個のネズミのフン。それは単なる不快な発見物であるだけでなく、注意深く観察すれば、ネズミの種類や侵入経路、活動範囲を推測するための貴重な情報源となり得ます。いわば、現場に残された小さな証拠品なのです。まず注目すべきは、フンの「形状」と「大きさ」です。日本家屋に侵入しやすい代表的なネズミには、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミがいます。クマネズミのフンは、長さ6ミリから10ミリ程度で、細長く、動きながら排泄するため散らばっていることが多いです。ドブネズミのフンは、10ミリから20ミリと大きく、太くて丸みを帯び、まとまって見つかる傾向があります。ハツカネズミのフンは最も小さく、4ミリから7ミリ程度で、米粒のように両端が尖っているのが特徴です。これらの特徴から、どの種類のネズミが侵入している可能性が高いかを推測できます。次に重要なのが、「発見場所」です。フンがどこで見つかったかは、ネズミの活動範囲や侵入経路を探る上で大きなヒントになります。例えば、高い場所、天井裏や棚の上などでフンが見つかった場合、運動能力が高く、高所を好むクマネズミの可能性が高まります。クマネズミは壁の中や配管を伝って移動することが多いため、壁際の高い位置やエアコン周りなどが侵入経路として疑われます。一方、キッチンや床下、ゴミ置き場周辺など、湿った低い場所で大きめのフンが見つかった場合は、水辺を好み、泳ぎも得意なドブネズミの仕業かもしれません。ドブネズミは床下の隙間や排水溝周りから侵入することが考えられます。物置や倉庫、あるいは部屋の隅などで小さなフンが見つかった場合は、好奇心旺盛で狭い場所を好むハツカネズミの可能性があります。彼らはわずかな隙間からでも侵入できます。フンの「状態」も参考になります。新しいフン(柔らかく光沢がある)が多く見つかる場所は、ネズミが頻繁に活動しているエリアである可能性が高いです。逆に、乾燥して硬くなった古いフンが多い場合は、過去の侵入跡か、活動頻度が低いエリアかもしれません。このように、たった一個のフンであっても、その特徴や発見場所を注意深く分析することで、目に見えないネズミの行動パターンや侵入経路をある程度推測し、より効果的な対策を立てるための糸口を見つけることができるのです。


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: