都心のアパートに一人暮らしをする山田さん(仮名)の悩みは、ベランダに設置された洗濯機に頻繁に出没するゴキブリだった。築年数が古めのアパートで、ベランダの隅にある洗濯機置き場は日当たりが悪く、隣の部屋との壁際で湿気がこもりやすい環境だった。入居当初から、時折ベランダでゴキブリを見かけることはあったが、ある夏、洗濯機の排水ホース付近で複数のゴキブリが活動しているのを目撃し、事態の深刻さを認識した。山田さんはまず、市販の殺虫剤で応急処置を試みたが、数日経つとまた新たなゴキブリが現れる始末。洗濯機の裏側や内部に巣があるのではないかと疑い始めた。次に、排水ホースと排水口の隙間を塞ぐパテや、洗濯機裏の通気口に貼る防虫フィルターを購入し、対策を講じた。さらに、ゴキブリが嫌うとされるハッカ油スプレーを自作し、洗濯機周りに定期的に散布するようにした。これらの対策により、以前よりはゴキブリを見かける頻度は減ったものの、完全になくなることはなかった。特に雨上がりや湿度の高い夜には、どこからともなく現れることがあった。根本的な解決には至らないと感じた山田さんは、思い切って管理会社に相談することにした。事情を説明すると、管理会社は専門の害虫駆除業者を手配してくれた。業者の調査によると、山田さんの部屋だけでなく、アパート全体、特に隣接する部屋との壁の隙間や、建物全体の配管周りなどがゴキブリの発生源や通路となっている可能性が高いことが判明した。駆除作業は、山田さんの部屋のベランダだけでなく、共用部分や他の部屋の周辺にも及んだ。ベイト剤の設置や、隙間への薬剤注入などが行われた。駆除作業後、業者からは、個人の対策だけでは限界があること、建物全体の対策と、継続的な予防(清掃、隙間管理など)が重要であるとのアドバイスを受けた。その後、山田さんのベランダでゴキブリを見かけることは激減した。この経験を通じて、山田さんは、外置き洗濯機のゴキブリ問題は、単に個人の問題だけでなく、建物の構造や環境全体が関わっている場合があることを学んだ。そして、一人で悩まずに、管理会社や専門家に相談することの重要性を実感したのだった。
あるアパート住民の洗濯機ゴキブリ奮闘記