布団に入るとかゆくなる、という悩みは多くの人が経験することですが、その原因が単なるダニや乾燥だけではない可能性も考えられます。セルフケアを続けても一向にかゆみが改善しない場合や、かゆみ以外にも皮膚に異常が見られる場合は、何らかの皮膚疾患が隠れているサインかもしれません。自己判断せずに皮膚科専門医に相談することが重要です。例えば、アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下しているため、健康な人なら問題ないようなわずかな刺激(寝具との摩擦、汗、ホコリなど)でも強いかゆみを感じやすい傾向があります。特に布団に入って体が温まると血行が良くなり、かゆみが増すことがあります。アトピー性皮膚炎は、単なるかゆみだけでなく、湿疹や皮膚の乾燥、ごわつきなどの症状を伴うことが多いのが特徴です。また、突然現れる強いかゆみと、蚊に刺されたような盛り上がった発疹(膨疹)が特徴の蕁麻疹(じんましん)も、布団に入って体が温まることをきっかけに症状が出ることがあります。温熱蕁麻疹やコリン性蕁麻疹と呼ばれるタイプがこれに該当します。原因は様々ですが、ストレスや疲労が関与していることもあります。さらに、疥癬(かいせん)という、ヒゼンダニという非常に小さなダニが皮膚の角層に寄生して起こる感染症も、夜間に強いかゆみを生じることが特徴です。疥癬の場合は、指の間や手首、脇の下、下腹部などに小さな赤いブツブツや線状の皮疹(疥癬トンネル)が見られることがあります。感染力が強いため、家族内や施設内などで集団発生することもあります。この他にも、乾皮症(皮脂欠乏性湿疹)や接触皮膚炎(かぶれ)、あるいは内臓疾患に伴うかゆみなど、様々な皮膚疾患がかゆみの原因となり得ます。これらの皮膚疾患は、それぞれ治療法が異なります。例えば、アトピー性皮膚炎にはステロイド外用薬や保湿剤、蕁麻疹には抗ヒスタミン薬、疥癬には専用の駆虫薬が用いられます。原因に応じた適切な治療を行わなければ、症状は改善しません。布団でのかゆみが長引く、どんどん悪化する、発疹の様子がおかしい、などの場合は、「たかが虫刺されや乾燥だろう」と軽視せず、必ず皮膚科を受診して正確な診断と治療を受けるようにしましょう。