公園や庭先で、赤やオレンジ色の体に黒い点々模様の、かわいらしい虫を見かけると、多くの人が「てんとう虫だ!」と思うことでしょう。アブラムシなどを食べてくれる益虫として親しまれているてんとう虫ですが、実は彼らによく似た姿をした、全く別の性質を持つ虫が存在します。その代表格が「テントウムシダマシ」と呼ばれる甲虫の仲間です。テントウムシダマシは、見た目こそてんとう虫に酷似していますが、その食性は大きく異なります。てんとう虫の多くが肉食性でアブラムシなどを捕食するのに対し、テントウムシダマシの仲間は草食性で、植物の葉や実を食べてしまいます。そのため、農作物や園芸植物にとっては害虫となる種類が多いのです。日本でよく見られるテントウムシダマシとしては、「ニジュウヤホシテントウ」や「オオニジュウヤホシテントウ」などが有名です。これらの名前は、背中の星(斑点)の数に由来しています。彼らはナス科の植物(ナス、ジャガイモ、トマトなど)を特に好み、葉の表面を削り取るように食害するため、葉が白っぽく網目状になったり、穴が開いたりする被害をもたらします。では、益虫のてんとう虫と、害虫のテントウムシダマシをどう見分ければよいのでしょうか。いくつかのポイントがあります。一つは、体の光沢です。多くのてんとう虫の体にはツヤ(光沢)がありますが、テントウムシダマシの仲間は、体表に細かい毛が生えているため、光沢がなく、くすんだような、ビロードのような質感に見えます。また、斑点の模様も微妙に異なりますが、個体差もあるため、光沢の有無で見分けるのが比較的確実と言われています。もし、庭や畑でてんとう虫に似た虫を見かけたら、すぐに益虫だと判断せず、少し立ち止まって観察してみてください。体のツヤがない、植物の葉を食べている、といった特徴が見られたら、それはテントウムシダマシかもしれません。正しい知識を持つことが、大切な植物を守る第一歩となります。