皮膚科の診察室には夏になると「虫に刺されて水ぶくれができた」と駆け込んでくる患者さんが後を絶ちませんが、医師の視点から見て最も懸念されるのは患者さんが自己流の処置で症状を悪化させてしまっているケースであり、特に多いのが「毒を出そうとして患部を強く絞る」「水ぶくれを針で刺す」「痒みに耐えきれず絆創膏の上から掻く」といったNG行動です。医学的に見て虫刺されによる水ぶくれは表皮の下にリンパ液が貯留している状態であり、これは体が毒素と戦っている炎症のピークを示しているため、この段階での治療目標は「水泡を破らずに内容物を吸収させること」と「炎症を鎮火させて痒みを止めること」の二点に集約されます。治療の第一選択薬はデルモベートやアンテベートといった「Very Strong」から「Strong」クラスの強力なステロイド外用薬であり、これをちびちびと薄く塗るのではなく患部に乗せるように厚く塗布し、その上から亜鉛華軟膏を塗ったガーゼやリント布で覆う「重層法」や「密封療法(ODT)」を行うことで薬剤の浸透を高め短期間で劇的に症状を改善させることが可能です。もし水ぶくれが巨大化して破裂の恐れがある場合や日常生活に支障を来す場合は、医師が滅菌された器具を使って無菌的に穿刺し内容液を排出させる処置を行うこともありますが、これはあくまで感染対策が万全な医療機関で行うべき医療行為であり自宅で行うことは感染リスクを高めるだけです。また水ぶくれが多発している場合や全身症状を伴う場合は、単なる虫刺されではなく水疱性類天疱瘡などの自己免疫疾患や帯状疱疹といった別の病気が隠れている可能性も除外できないため、たかが虫刺されと自己判断せず皮膚科専門医による鑑別診断を受けることが重要であり、早期受診こそが早期治癒への鍵であることを忘れてはなりません。