ベランダに落とされる鳩のフンを、単に「汚い」「掃除が面倒」なだけのものだと考えていませんか。もしそうであれば、その認識はすぐに改める必要があります。鳩のフンは、見た目の不快感や悪臭だけでなく、私たちの健康を脅かす様々な病原菌やアレルゲンを含んでおり、放置することは非常に危険な行為なのです。鳩のフンが乾燥すると、細かい粒子となって空気中に飛散しやすくなります。そして、それを人間が吸い込んでしまうことで、様々な感染症を引き起こすリスクがあるのです。特に注意が必要なのが「クリプトコッカス症」です。これは、鳩のフンに含まれるクリプトコッカスという真菌（カビの一種）を吸い込むことで感染する病気で、健康な人であれば軽い風邪のような症状で済むことが多いですが、免疫力が低下している高齢者や持病のある方が感染すると、重い肺炎や髄膜炎を引き起こし、命に関わることもあります。また、「鳥インフルエンザ」や「サルモネラ菌による食中毒」、「オウム病」といった人獣共通感染症の病原体を媒介する可能性も指摘されています。これらの病原菌は、フンだけでなく、鳩の体表や羽毛にも付着している可能性があります。さらに、フンはアレルギーの原因ともなります。乾燥したフンや、フンに発生したダニ、鳩の羽毛などがアレルゲンとなり、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といった症状を悪化させる、あるいは新たに発症させる引き金になることがあるのです。健康被害だけでなく、建物自体へのダメージも深刻です。鳩のフンは強い酸性のため、金属の手すりや室外機などを腐食させ、錆びさせてしまいます。また、コンクリートや塗装面を劣化させ、シミや変色の原因ともなります。このように、鳩のフン被害は、私たちの健康と住まいの両方を蝕む深刻な問題です。もしベランダにフンをされてしまった場合は、決して素手で触らず、マスクと手袋を着用し、乾燥したフンをいきなり掃いたりせず、まず水で湿らせてから取り除くようにしましょう。そして、根本的な解決のために、鳩を寄せ付けない対策を講じることが、家族の健康を守る上で何よりも重要となります。