田中さん(仮名)が自宅のベランダの軒下に、小さな蜂の巣を見つけたのは、ゴールデンウィーク明けのことだった。直径はまだ5センチほどで、数匹のアシナガバチが巣の周りを動き回っているのが見えた。「まだ小さいし、業者を呼ぶほどでもないかな」。そう考えた田中さんは、市販の殺虫剤で自分で駆除しようかと一瞬考えた。しかし、インターネットで調べてみると、アシナガバチでも刺されると危険なこと、巣が大きくなるスピードは意外と速いことなどが書かれていた。少し不安になった田中さんは、ひとまず数日様子を見ることにした。それから3日後の朝、田中さんはベランダに出て愕然とした。蜂の巣は明らかに大きくなっていたのだ。直径は倍近くになり、巣の周りを飛び交う蜂の数も10匹以上に増えているように見えた。たった3日でこれほど成長するとは。田中さんは自分の判断の甘さを後悔した。「これはもう自分では無理だ」。そう悟った田中さんは、すぐにインターネットで地元の害虫駆除業者を探し、電話をかけた。状況を説明すると、業者は「アシナガバチですね。働き蜂が増え始めると、数日で巣はどんどん大きくなりますよ。すぐに伺います」と迅速に対応してくれた。その日の午後、駆除業者が到着した。作業員は白い防護服に身を包み、手際よく巣に薬剤を噴射し、巣を撤去していった。作業時間は30分もかからなかった。「もう少し発見が遅れて、巣が大きくなっていたら、駆除費用ももう少し高くなっていたかもしれませんね。早めの連絡で良かったです」と作業員は言った。田中さんは、プロの仕事ぶりに感心すると同時に、初期対応の重要性を改めて痛感した。「あの時、自分で駆除しようとしなくて本当に良かった。もし刺されていたら…」。蜂の巣の成長スピードは想像以上であること、そして、少しでも不安を感じたら迷わず専門家に相談することが、安全のためにも、結果的に費用を抑えるためにも最善の策なのだと、田中さんは学んだ。発見から駆除まで、わずか数日の出来事だったが、それは田中さんにとって大きな教訓となった。
ある家の蜂の巣発見から駆除までの数日